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日本司法福祉学会ニュースvol.48

1.新学会長よりご挨拶

原点に立ち戻り、そしてさらなる発展を

会長 藤原 正範(鈴鹿医療科学大学)

2018年8月の日本福祉大学東海キャンパスで開催された第19回学会総会で会長に選任されました藤原正範です。正直なところ、教育・研究者として経験の浅い私が、学術団体の長の職責を果たすことができるのか、不安いっぱいです。現在、社会福祉領域においてもっともにぎやかに議論が交わされているのは、司法福祉(学)分野ではないでしょうか。会長に就任したからには弱音を吐くわけにはいきません。向こう3年間、各分野でご活躍の理事・監事メンバーと力を合わせて、学会発展のために一生懸命取り組んで参る所存です。

日本司法福祉学会は、2000年11月に設立されました。「司法福祉」は、1968年、初代会長山口幸男先生によって提起された学術領域です。本学会の前史として、「司法福祉研究会」(1964年、東京家庭裁判所司法制度研究サークルとして発足、1968年に同研究会に名称変更)、「東海非行問題研究会」(1969年、日本福祉大学学生を中心に設立、1970年に同大学山口幸男先生が事務局)、「関西非行問題研究会」(1974年設立、近畿大学高橋貞彦・関西学院大学前野育三の両先生が代表)の3つの研究活動が存在しました。この3つの団体の活動の経緯について、山口先生が「学際研究開発と実践研究-ひとつの経験-」(『近畿大学法学』53-3,4, pp.1(512)-28(485), 2006年)という論文に整理されています。山口先生は、この論文の中で、この3つの団体が「法律家・臨床家・市民の対話と研究協同を重視し、参加者が互いに協同者の論理・役割を理解し、事実に即した協働の経験を積み、一般化・普遍化・理論化することの重要性を認識していた」と記しています。

私は、日本司法福祉学会の原点であるこの言葉に立ち戻り、将来に向かってこの精神を受け継いでいきたいと考えています。幸い、日本司法福祉学会は、研究者と実務家とがとてもいい関係を保っていると内外から評価されています。また、司法福祉と捉えられる業務が拡大する中で、多分野の人々が集い、研究の幅が飛躍的に広がり、学会活動は拡大局面にあります。しかし、その一方、私たちは何を目指しているのか、その方向性が少しぼやけてきているという印象があります。今一度、私たちが「一般化・普遍化・理論化」しようとしているものが何かを確認することが必要です。「日本犯罪社会学会」、「日本犯罪心理学会」、「法と心理学会」、「日本更生保護学会」など類似する領域を扱う学会とどこが違うのか、私たち学会の独自性がどこにあるかを自覚しなければなりません。

向こう3年間、私は次の2つの目標に向かって進みたいと考えています。

  1. 「幅広い研究協同」と「事実に即した協働の経験」を不断に生み出すことができる組織体制を創ること
  2. 日本の関連学会、国際的な組織との学術交流を活性化して、より幅広い視点から「一般化・普遍化・理論化」を目指すこと

学会活動は、一人ひとりの会員の皆様の日々の研究・実践が拠り所であり、それによってのみ前進します。皆様の力強いお力添えをよろしくお願いいたします。

2.第19回全国大会(東海大会)開催報告

実行委員会委員長  木村 隆夫(日本福祉大学)

2018年8月18日(土)・19日(日)の2日間にわたって、第19回全国大会が日本福祉大学東海キャンパスで開催されました。会場確保の関係から、開催日が盆休み明けとなり、初日は大学の閉鎖日と重なったことなどでご迷惑をおかけしましたことをお詫びします。

東海キャンパスは、2015年に開設された新しいキャンパスです。もちろん司法福祉学会の会場として使用されるのは初めてですが、中部空港や名古屋からのアクセスの利便性、駅から会場までの距離、会場が使いやすく移動しやすいことで高い評価をいただきました。

大会テーマは「『再犯防止』と、人・組織」とし、第1日目は、「『再犯防止』対策における、地方公共団体と民間団体の可能性」をテーマにシンポジウムが行われました。まず行政報告として、 法務省企画再犯防止推進室長関口新太郎氏がテーマに沿った報告を行い、次いでチェンジングライフの野田詠氏氏が、「再犯防止」を目指す民間団体の取組について実践報告を行いました。

次にシンポジウムが行われ、青木志帆氏(明石市社会福祉協議会)、高坂朝人氏(再非行防止サポートセンター愛知)、佐々木央氏(共同通信)の三者から、それぞれの「再犯防止」の実践や意見が述べられました。なかでも、その中で、「つなぐ」「ささえる」「ひろげる」を柱とした、明石市における取り組みが注目されました。

さらに、大会前日に「全国再非行防止ネットワーク協議会」(全再協)が名古屋市内で発足し、そのメンバーが大挙参加して全再協設立後には行政に向けて、①帰り先のない少年院在院者の居場所の確保、②少年個々の特性を踏まえた非行・再非行防止の連携、③非行少年の社会復帰システムの確立に向けた政策提言を行うことが報告されました。

第2日の午前中は、自由研究発表が行われ、12人の研究者・実務家が研究報告を行いましたが、多くが再犯・再非行防止についての、司法と福祉の連携を基軸にした研究及び実践報告を内容としたものでした。

午後には、下記の8つの分科会で熱心な論議がされました。

  1. 「『再犯防止』に向けた入口支援の現状と課題~愛知の取り組みから見えてくること」
  2. 「薬物事犯者の再犯を防ぐソーシャルワークとは~対象者の揺れにどう向き合うか」
  3. 「児童養護施設、入所型児童福祉施設における児童同士の性暴力に関する取り組みについて」
  4. 「受刑者の性別、家族の関係から考える再犯防止」
  5. 「再犯防止と加害者家族支援」
  6. 「DVの再加害を防止するために何が必要か~カナダ、シンガポールにおける取組みを手掛かりに」
  7. 「『少年非行』厳罰化に抗するために?今、あたらためて『つながり』から支援を考える」
  8. 「再犯防止-児童自立支援施設・小舎夫婦制の取り組みから-」

このうち、実行委員会企画分科会である第1分科会では、愛知における入口支援の実践をもとに入口支援のあり方をともに考える企画が組まれました。名古屋高等検察庁林真琴検事長より、理念が異なる司法と福祉が連携することには困難を伴うが、福祉側からの司法への積極的な働きかけと、刑務所改革、検察改革、再犯防止等による刑事司法側の変化により出口・入口支援が可能となったという経緯の紹介とともに、今後の入口支援の課題として、地方公共団体、地域福祉との連携の重要性が示されました。

その他に、名古屋地方検察庁での入口支援の実際、愛知県弁護士会における触法障がい者支援に関する取り組み、NPO法人ささしまサポートセンターにおけるホームレス・生活困窮者支援団体としての入口支援に関する取り組み、名古屋市緑区北部いきいき支援センターの概要と入口支援に関する取組みに関する報告があり、様々な機関が、刑事司法、福祉の枠を超えて、それぞれの立場を活かしながら取り組むことが大切であることが確認されました。

2日間を通じた参加者は223名、当初目標とした250名には届きませんでしたが、まずまずの結果であったと思われます。一般参加者の中に現職の国会議員1名と国会議員秘書3名、地方議員2名が参加されており、大会テーマへの関心の深さをうかがわせました。

さいごに、大会の開催に当たり、ご尽力・ご協力いただいた会員各位に心から御礼申し上げます。

3.2017年度第3回理事会報告

  • 開催日時:2018年8月17日(金曜日)18:00-19:55
  • 会場: 東海市芸術劇場2階会議室(東海市大田町下浜田137番地)
  • 出席者:遠藤洋二、木村隆夫、小林良子、小長井賀與、斎藤知子、杉浦ひとみ、須藤明、福永佳也、古川隆司、水藤昌彦(記録)、村尾泰弘、室井誠一(50音順?敬称略)
  • 欠席者:相澤仁、石川正興、武内謙治、辰野文理、松友了(同上)

1. 各委員会報告

(1) 総務委員会

報告すべき事項は特にないが,学会の規模が拡大しているなか、将来的な組織としてのあり方について、引き続き議論が必要である。

(2) 国際委員会

今年度は国際活動に関する補助申請がなかった。新体制の理事会に向けての引き継ぎ事項としては、今後の国際活動の活性化に向けた検討が必要である。

(3) 編集委員会

  • 村田編集委員長代理の主導のもと、司法福祉学研究第18号を今月刊行した。
  • 今号では、自由研究報告の内容が向上し、関連する他学会の研究誌と比較しても遜色ないものとなったと考える。
  • 投稿論文の掲載を見送る際の判断にあたっては、査読委員の意見を尊重しつつも、編集委員会がより主体的に決定に関わるという形もあり得ると思われ、編集委員会と査読委員の関係などを整理していく必要がある。
  • 学術団体としての登録は、長年の課題となっている。登録にあたっては課題が2つある。第1は会員に占める研究者の比率が半数を超えていなければならないこと、第2は刊行する学術雑誌に占める研究論文の割合が50%を超えていなければならないことである。後者については,編集委員会で引き続き検討していきたい。

2. 日本社会福祉系学会連合運営委員会報告

  • 当学会の運営委員としての2年間の任期は、本年度5月をもって終了した。学会連合では、大規模なシンポジウムを年に1回開催しているが、過去2回が無事に終了した。
  • 構成学会の中では、日本社会福祉学会が最大の会員数を擁するので、代表は同学会が務めている。
  • 学会連合による補助制度がある。海外の研究者招聘を招聘する際、5万円を上限として補助する制度が昨年度に新設された。学会連合としての活動費の余剰金を充てているので、それが尽きるまで継続する。

3. 総会関係

(1) 2017年度の活動報告および決算報告案

決算報告書に関して,国際文献社における過年度分学会研究誌の保管料については,今後削減の方向で検討する課題とされた。

(2) 2018年度の活動方針および予算案

昨年の活動方針を踏襲し、予算案も昨年度分を基に算定した。

4. 役員の改選

  • 大会第1日目の8月18日、会場内に投票場所を確保している。参加者に投票を呼びかける。理事は10名連記、幹事は2名連記となる。前期理事会において確認されている通り、10名あるいは2名すべてが記入されていなくても有効票とする。この点は、投票会場において会員に告知する。
  • 懇親会開催中に集計し、大会第2日目の8月19日朝には開票結果を告知する予定である。
  • 大会第2日目午前のプログラム終了後、午前11時35分より新理事による会合を開催し、そこで会長と事務局長を互選する。その後、総会で新理事、会長、事務局長を紹介する予定である。
  • 9月中に新理事による理事会を開催する予定である。

5. 2019年度大会

これまで会長・事務局長を中心に複数の候補地について検討し、関係者に打診しているが、現時点では開催地は未定となっている。

6. その他

  • 理事会より、加藤幸雄会員、佐々木光郎会員、八田次郎会員を名誉会員として推薦することを全会一致で決定した。総会の議決をもって承認となる。名誉会員には、表彰状と記念品を贈呈する。
  • 全国大会の運営について、以下の意見交換がなされた。
    • 大会ごとに運営委員が入れ替わっているため、大会の安定的な運営が難しい状況にある。この問題への対応策として、全国大会の開催の担当理事を置く、あるいは全国大会委員会を設置することを検討すべきである。
    • 理事会の開催回数が年2回しかないなか、運営委員会と理事会の連絡を密にする体制を構築することは妥当であるのか検討が必要だろう。
    • これまで大会会場が決まってから、担当理事が決定してきている。事前に担当理事を決定する方式とすると、その理事への負担感がたいへん大きいのではないか。
    • 大会会場を提供する役割、大会の内容を考える役割を分けることも一案ではないか。
    • 来年度の開催に向けてやらなければならないこととは別に、大会開催に向けての定型的な業務内容とスケジュールの整理を目指して作業することを検討すべきだろう。
    • 大会運営の内容を考えると、①大会テーマの決定とシンポジウムの企画運営、②分科会企画の受付と対応、③自由報告申込みの受付と対応の3つに分けられる。このうち、②と③については定型的な作業が多いと見込まれるので、これらはマニュアルの整備などで対応できることも多くあるのではないか。

【次回理事会の開催日程】

今回の選挙で新たに選出された理事によって、9月中に開催する予定である。

4.2018年度第1回理事会報告

2018年8月19日(日)、日本福祉大学東海キャンパスで開催された第19回全国大会において、任期満了に伴う理事改選のため選挙が行われ、10名の理事と2名の監事が選出された。

その後直ちに第1回理事会が開催され、理事互選により藤原正範理事(鈴鹿医療科学大学)が新会長に、木下大生理事(武蔵野大学)が事務局長に選任された。また、新会長より指名理事5名が提案され、出席者の同意により決定された。その結果、新理事会体制は以下の通りとなった。

【新理事会体制】(アルファベット順)

〔理事〕

藤原正範(鈴鹿医療科学大学)、福永佳也(大阪市)、柿崎伸二(札幌矯正管区)、木村隆夫(日本福祉大学)、木下大生(武蔵野大学)、小林良子(早稲田すぱいく)、松田和哲(千葉弁護士会)、水藤昌彦(山口県立大学)、村田輝夫(関東学院大学)、森久智江(立命館大学)、坂野剛崇(関西国際大学)、須藤明(駒沢女子大学)、杉浦ひとみ(東京アドヴォカシー法律事務所)、武内謙治(九州大学)、辰野文理(国士舘大学)

〔監事〕

齋藤知子(帝京平成大学)、相澤 仁(大分大学)

5.2018年度第2回理事会報告

  • 開催日時:2018年9月23日(日曜日)10:00-11:55
  • 会場: 池袋ルノアール東口パルコ前店
  • 出席者:〔理事〕藤原正範、柿崎伸二、木下大生(記録)、小林良子、松田和哲、水藤昌彦、森久智江、村田輝夫、坂野剛崇、須藤明、杉浦ひとみ、〔幹事〕相澤仁、斎藤知子(アルファベット順?敬称略)
  • 欠席者:〔理事〕福永佳也、武内謙治、辰野文理、木村隆夫(同上)

1.

藤原新会長より挨拶、その後各理事と幹事から自己紹介があった。

2.2018年度総会報告

【報告事項】

1.第1回理事会における決定事項

会長、事務局長が理事の互選により選任されたこと、指名理事の決定、第2回理事会開催日程の確認があったことが報告された。

【決定事項】

1.第20回全国大会
  • 2019年度の第20回全国大会は鈴鹿医療科学大学で開催する。
    ⇒開催日程は、8月24~25日、8月31日~9月1日のいずれかとして、開催校の都合により最終決定する。なお、再来年度以降の全国大会について、開催時期が従来通りの8月でよいかの検討が必要。
  • 大会シンポジウムの企画は、水藤・坂野・森久理事が担当する。

3.社会福祉系学会連合

【決定事項】

総会には小林理事が引き続き出席する。

4.日本犯罪関連ネットワーク会議

【決定事項】

参加が求められる場合は木下事務局長が対応し、それが困難な場合は須藤理事が対応する。

5.委員会体制

【決定事項】

1.各委員会の役割分担
  • 総務委員会・・・規約改正、学会のあり方(法人化・学術団体を目指すのか)
  • 国際委員会・・・海外の学会に参加する場合の資金援助
  • 編集委員会・・・学術誌の発行

各委員会に委員長を置き、予算が配分されている。

【各委員会体制と今後の検討事項】

1.総務委員会

◎杉浦(委員長)、福永、柿崎、木村、小林、松田、相澤、(木下)

委員会による検討事項として、以下の点が会長より提案された。

  • 選挙規定の見直し
  • 学術会議への参加の検討(学術会議による指摘⇒研究者比率が低い等)
  • 司法福祉の定義の構築
  • 全国大会の開催時期

2.国際委員会

◎水藤(委員長)、武内、森久

委員会による検討事項として、以下の2団体との交流が会長より提案された。

  • NOFSWとの交流の継続。来年はラスベガスで大会が開催される。
  • IFSW(国際ソーシャルワーカー連盟)との交流、研究発表。
  • 国際ソーシャルワーカー会議は2年に1回、アジア太平洋大会は1年毎に開催。

3.編集委員会

◎村田(委員長)、坂野、須藤、辰野、齋藤、木下

  • 17号から学会誌の投稿締め切りを2か月繰り上げて編集開始していたが、査読期間と査読委員の多忙期が重なることを考慮した事情がある。現査読委員の任期が12月で満了し、交代期を迎えるため、10月編集スタートは困難であり、早急に検討を要する。
  • 特集論文、依頼原稿の取扱いについて検討を要する。
  • 大会の記録を論文化する件について検討を要する。
  • 学会誌に掲載される学術論文の比率を引き上げるために大会記録と論文集を分けるという提案が以前になされていることから、この点についても検討すべき。
  • 論文募集の締め切りを2019年1月10日に変更する。
  • 上記の締切日延期については一斉メールで会員に告知する。

6.その他

1)ニュースレター

編集は水藤理事が1年間担当し、その後は交代する。

2)研究集会および次回理事会の予定

2019年2月11日(月)に全国心身障害者福祉財団にて以下の通りに開催する。
10:00~12:00 研究集会
13:00~14:00 各種委員会
14:00~16:00 理事会

6.「司法福祉学研究」第19号への投稿期限延長のお知らせ

学会誌編集委員長 村田 輝夫

2018年10月4日付一斉メールにてお知らせした通り、「司法福祉学研究」第19号について、第2回理事会で検討の結果、投稿原稿の締切を2019年1月10日(木)午後5時に変更することとなりました。締切まで若干の期間がございますので、会員各位の積極的なご投稿をお願い申し上げます。なお、当初締切日までにご投稿いただいた会員各位におかれましては新しい日程についてご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

上記の投稿期限延長の理由としては、大会報告等からの論文化を促すという趣旨もございますが、直接的には、大会で学会役員の改選が行われ、それに伴って、学会誌編集体制も交代期を迎えたことに対する対応の意味が大きいと考えております。査読委員を含めた新しい編集体制は2019年1月スタートを予定しております。交代期での編集作業の開始は現実的には困難と思われるので、新しい体制で編集作業を行うこととなりました。ご理解賜りますようお願い申し上げます。


以下、投稿期限等について再掲いたします。

  • 投稿原稿の締切:2019年1月10日(木)午後5時
  • 提出先:生活書院
  • 投稿についてのご質問やご意見:村田宛メールでお願いいたします。

なお、東海大会記事については、大会シンポジウム及び分科会等企画者の方宛てに別途原稿を依頼させていただきます。

7.会員動向(2018年11月16日現在)

  • 正会員 404名
  • 学生会員 36名
  • 名誉会員 9名

計 449名

★会費未納の方は、納入にご協力ください。